序章

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 しかし男は動こうとしなかった。  そう瞳を閉じ、少女の手を払いのけることもせず、ただ苦渋を顔に浮かべ立っている。 「父様?」  すると男は、瞳を開けると首を横に振った。 「お前を守る力は、私にはない。お前は、この国を出ることでその身を守りなさい」 「父様?」  男は、もう一度ため息をつく。その顔には、悲しげな表情が浮かんでいた。 「お前を勘当する。明日、この家を出て行くが良い」  男はそう言い放つと少女の手を払い除け、自室へと歩き始める。  少女は途方にくれるように男を見つめ、その場に立ち尽くしていた。
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