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しかも模様の描かれた布を腹部に置き、紅い帯でそれを留めていた。
少女は、黒い髪を一つに結い上げ、赤い紐と大きな二つの鈴でそれを飾る。
そのため少女が動くたびに、チリンチリンと涼しげな音が辺りに響いた。
「相変わらず、早いよな。今日は、俺が一番乗りだと思ったのにさ」
少女が声のした方を振り向くと、少し年上な感じの少年が立っていた。
その少年の、少し長めの髪は栗色。そしてその瞳は、枯葉色をしている。
その少年の名は、ギルティア=パルーダ。少女の住む家の隣人であった。
「ギルこそ。まだ寝ていてもいいんじゃないか?」
その言葉を聞いて、ギルティアはにやっと口の端を上げる。
「いつ会っても思うけど、顔と言葉使いが合ってないぞ?」
少女は、むっと頬を膨らませる。その姿もまたかわいらしいものであった。
「しょうがないだろう? 手本となるのが、あの商人なのだからな」
ギルティアは、くつくつと笑いをこぼしていた。
それに対し、少女はますます頬を膨らませながら、水汲みを続けている。
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