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「でもすごいよ。三ヶ月で、そこまで話せるようになるんだから。――初めて会った時は、全然話せなかったのにな」
三ヶ月前、少女はこの地へ移住してきた。
鈴館美琴、そう依頼人の家を半壊にし、親に勘当を言い渡された少女である。
全く異国の言葉など聞いた事のなかった少女は、商人に連れられ、右も左もわからない状況でこの国へ送られたのだ。
「三ヶ月の間、この国の言葉の中に身を置いたんだ。必要に迫られれば、覚えざるをえまい?」
美琴は水汲みの作業を終え、桶の取っ手を握り立ち上がる。
「じゃあ、俺もミコトの国に三ヶ月住めば、ミコトの国の言葉を話せるのかなぁ」
ギルティアは、一瞬夢見るような表情を見せた。
が、すぐに井戸の傍へ移動し、水汲み用の桶を下に落とす。
「覚えようと思えば、できるだろう。私にできたんだからな」
その言葉にギルティアは美琴ににっと笑みを向けると、水汲みを続けた。
美琴はその場を去ろうと歩き出したが、すぐに足を止める。
そして後ろを振り返り、意を決したような瞳をギルティアに向けた。
「ギル、一つ頼みがあるのだが。聞いてもらえるだろうか?」
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