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太陽が空の真上へ到達し、強い日差しを注ぐ時刻。
南にある商業区では、宿屋や食堂に多くの人が集まり、賑わいを見せている。――いわゆるお昼時であった。
しかしそんな中、賑わいを外に追い出し静かな時間が流れる建物があった。
そこは木で造られた古い建物。その中はしんと静まり返っていた。
しかも掃除を終わらせた後なのか、テーブルの上に椅子が置かれ、床は濡れている。
そんな中に、一人の女性がいた。
日差しに当たると紅みを帯びて見える長い菫色の髪、アイスブルーの瞳。
そして凛々しさを見せる美しい顔を持つその女性は、ぐったりと木のテーブルにうつぶせになっていた。
しかもつまらなそうな表情を見せ、虚ろにどこかを見つめている。
「早く夜にならないかしら。暇だわ」
女性は、机に頬をつけながら呟く。それも力なくうなだれているようにも見えた。
ふいにカランカランと鐘の音が響く。
女性が顔を上げ扉の方を振り向くと、そこには小柄な人物が立っていた。
それも厚い外套で身を包み、フードで顔を隠している。
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