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「営業は、夜からよ。食事なら他をあたってちょうだい」
女性は突き放すように呟いた。しかも迷惑そうな表情を見せている。
それは姿を見せぬ者に対し、不信感を抱いているように。
「申し訳ありません。食事ではなく、リュミレス=ミル=グローズ様にお会いしたいのです」
外套の下からとても可愛らしい声が響いた。まるで小鳥のさえずりのような。
女性は、予想外の声に面食らったような表情を見せていた。が、すぐに険しいものへとその表情を変える。
「リュミレスは、私よ。あなたは、誰なのかしら?」
リュミレスは視線を鋭くし、外套の人物を見つめた。
外套を被った人物は袖より腕を出し、ゆっくりとフードを脱いだ。
するとさらさらの若草色の髪が零れ落ちる。そして優しげな翡翠のような瞳が印象的な少女の顔が現れた。
しかも人好きのする笑みを顔に浮かべて。
「名乗るのが遅れて申し訳ありません。私は、ミゼルオーラ=デルフィードです。あなたにお願いがあって参りました」
少女は、ゆっくりと優しげに話を続ける。その姿は、とても安らげる清しい雰囲気を見せていた。
リュミレスは、見惚れるようにその少女を見つめている。
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