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しかもさっきまでの警戒心が、全く無くなっていた。
「……翡翠の神子」
リュミレスは、思わずそう呟く。
翡翠の神子とは、ミゼルオーラに対して使われる言葉である。
翡翠色の瞳であることもあるが、この土地で最も希少な石である翡翠とかけて、尊い神子であると言っているのだ。
「翡翠の神子? 時折その言葉を耳にしますが、どういう意味なのでしょう?」
ミゼルオーラは、首をかしげるようにして呟いた。その様子もとても可愛らしい。
「いえ、気にしないで。それよりも私に用事って、どんな事なのかしら?」
リュミレスは気を取り直ししたように、真面目な表情を見せる。
しかも一瞬であるが、罰の悪そうな表情も見せていた。
恐らく相手のペースになっていた事を反省したのであろう。
そんな事などまるで気づいていないミゼルオーラは、微笑みを返した。
「少し長い話になります。そこに座らせていただいてもよろしいですか?」
そしてミゼルオーラは、リュミレスの向かいの椅子を指し示す。それもゆっくりと流れるような動作で。
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