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街の中心である噴水の周りを半径二十メートル程の広さで、円形状に公園のような広場が広がっている。
この広場の中には、いくつかベンチが置かれ、点在する木々が木陰を作っていた。
またあちこちに花壇が存在し、美しい花々を咲かせている。
そして道には煉瓦が敷かれており、所々におうとつが見られるも整然とした印象を抱かせる風景を見せていた。
[ここに来るのは、久しぶりね]
広場を吹き抜ける風にあたりながら、そう美琴は呟いた。
それはこの国で使われる事のない、自国の国の言葉で。
美琴は、辺りを見回した。すると目の前には、穏やかな昼の風景が広がっている。
それは明るい風景の中に、日傘をさした貴婦人達が立ち話をしている姿、可愛らしい笑い声をたてて遊ぶ子供達も見えた。
そして男達もベンチに腰掛け、新聞を読みながら何か飲み物を飲んでいる。
するとふと弦を爪弾く音色が、美琴の耳に入った。
その音のする方を振り向くと人の壁が目に入る。そしてその中心から、音は聞こえているようだった。
[あれね]
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