序章

6/15
前へ
/434ページ
次へ
「とにかく、見つからないようにしましょう」  男がそう呟くと、姫と呼ばれる人物はこくこくと頷いた。 「とりあえず、どうしますか? これから」  何故であろうか、男は平静さを取り戻したようだった。  さっきまでの怯えた様子がまるでない。それは姫と呼ばれる人物の表情のためであろうか。 「鬼が出るのを待つわ」  姫と呼ばれた人物は、きっぱりと答えた。  そして真剣な眼差しで男を見つめる。それは、それ以外は考えていなさそうな気配であった。 「鬼が出たら?」  男は、心配そうな表情を顔に浮かべていた。 「私の技で、倒す」  姫と呼ばれる人物は、さも当たり前といった様子で答える。  そう何をいまさらと思っているような表情をしていた。  それに対し男が気難しそうな顔で何か言おうと口を開きかけた時、姫と呼ばれる人物が手で口元を押さえそれを制した。  そして頭上の板を真剣な眼差しで見つめている。 「来た」
/434ページ

最初のコメントを投稿しよう!

386人が本棚に入れています
本棚に追加