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ポーロ・クノッペル氏はアンティークの収集家だった。彼の家には、100年の時を経た古い家具、銀食器、そして人形たちであふれていた。窓辺には、フランスやドイツで作られたビスクドールが並び、まるで見えているかのようなガラスの目で通りを見つめている。
通りはジュニアスクールに面していて、たくさんの子供たちがポーロ氏の家の前を通る。
そのスクールに通うメラニーは、出窓の真ん中にキリリと立っている一体のビスクドールにすっかり魅せられていた。
欲しい!
あれがもし私のものになるのだったら、自分の手に取って抱き締められたら、きっと泣いちゃうくらい感動するのに。
その家の前を通り、出窓を見る度に人形への思いは深くなる。
『あの人形は値段が付かないくらい価値が高いそうよ。』
出窓に並ぶビスクドールを見ながら、通り行く大人が話すのを聞いた…
メラニーは、あの窓越しの人形に、どうしても手にとどかないのだと知ると、悲しくて悲しくてたまらなくなった。
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