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無性に、あの大口を開けた笑い声が、聞きたくなった。
あの声が無性に、こいしい。
あいたい。
あいたいよ、すみれさん。
おれの寝ている部屋の壁一つ向こうですみれさんが、
声を殺して泣いている夜。
隣の部屋で悔しさに一晩中歯噛みしたけれど。
おれの部屋に酔っ払って乱入してきたすみれさんが、
おれのことを男として見ていないからこそ、おれを押し倒す夜。
その部屋から、怒鳴りたいような泣きたいような気持ちで逃げたけれど。
すみれさんが、
ソープの客をアパートに連れてくる、夜。
ただ、独りで泣いたけれど。
それでも、
それでも、
おれはあんたがすきだよ。
あんたにとって、失礼な言葉でも、
おれはあんたを守りたいよ。
あんたがもう、泣かなきゃいい。
あんな靴、履かなきゃいい。
わらってよ。
わらって。
あんたが、すき。
すきだ。
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