エンドレス鬼ごっこ3

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      「武藤君」   彼女は、少し時間を置いてから、おれを呼んだ。 おれはといえば、みっともなく道端にしゃがみこんで頭を抱えている。 それなのに、彼女は同じようにおれに向き合う形でしゃがみこんだ。 まだ、顔は上げられないけれど、それでもうつむいた視線の中に、彼女のしゃがんだ膝が見えた。   「武藤君、……好きな人が、いるんでしょ」   やさしい声だった。 彼女は、そのいたわるような声で核心をつく。 おれはといえば、気を抜けば嗚咽が口から出そうで、黙った。 それでも、好きな人は、いた。   「きれいな人?」   「…」   「かわいい人?」   「…」   「やさしい人?」   「………………バカな、人…」   「…そう。それでも、誰より好きな、人?」       つらいんだ。 すみれさんを想うと。 あの人はひどい人で、おれはいつも痛くて、苦しくて。 泣いても泣いても、物に当たっても、少しも楽にならないほど、つらくて。 だけれど。     おれは、震える声で、小さく小さく、   「…うん」   はじめて声に出して、すみれさんが好きだと、いった。
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