2.異端者-ジブリール-

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2-1.『忠告』   起源を同じくする故に看破できる事実。諫める言葉は彼の者の為か、それとも。  (-階級のない天使?そんな…)  風のように去った少女の残した言葉。それはあまりに訝しいものであった。  -有り得ない。  階級。それは天使にとって『存在証明』とも言うべきものなのだ。天使が天使として生まれた『証』。それを持たない等ということは理論上有り得ない。  (…どういうことなんだ)  答えを求めるように宙を仰いだ、その時。  「ラフィー!」  大樹の下から呼び掛けられた。  「…ラケル?」  聞き慣れた声に目をやると、黒髪の青年が呆れたように見上げていた。  「どうかしました?」  持ち前の穏やかさで微笑するラファエルに青年は一瞬唖然とし、それから大きく溜息を吐く。  「『どうかしました?』じゃないだろう…。授業はどうした?」  「今は昼休みでしょう?」  「…天界史」  「ああ、ちょっと休ませていただきました」  「…あのな…」  はぁ、と一段と大きな溜息を吐く。  「お前はもう少し、自分の立場というものを…」  「…わきまえていますよ」  ふわりと降り立ったラファエルはばつが悪そうに微笑った。  「わきまえてはいます。けれど、これは僕のささやかな『願い』なんです」  「…『願い』?」  「せめて、学園(ここ)に居る間は…一学生として、過ごしてみたい」  寂しげに微笑うラファエルに諦めたように微笑みを返し、ラケルは。  「…お前らしい。だが、あの女と関わるのはやめておけ」  不意に真剣な瞳をして、言った。  ラファエルは一瞬怪訝そうにラケルを見つめ、しかしそれ以上は何も言わずに「…食事にしましょう」といつものように穏やかに微笑った。  大樹に遮られた陽光が、萌える緑の隙間からきらきらと降り注ぐ。  木漏れ日は、さながら光の雨かと思われた。
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