アラスカ

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あとは、皆でテレビを見たり……。 だが、生活の中心である筈のこの部屋は、今惨劇だった――。 全てが対照的。 暖かいという雰囲気ではなく、冷たい雰囲気。 笑いの表情というより、哀しみの表情。 生きているというより、死んでいる。 そう、死んでいるのだ。 全てが……。 時が……、止まっていた。 ――壁には赤黒い物が付着し、鉄の様な異臭が立ち込めていた。 バラバラに切断された肉片。 バラバラ死体が3人分。 目算ではあるが、肉の質量から考えると3人分くらいだろう。 大人2人分と子供1人分。 「酷い有り様だな、これは。1件目でこれなら、他もこうだろうな。 確証はないが。 これだと、一応他も見て回らなけりゃならないな」 はあ、と溜め息。 ……面倒くさい。 面倒くさいのだが、調べてみたい。 人間の複雑な心理だ。 どっちつかずで、どちらも手に入れようとする。 フェイクは死体の側に近寄り、その場にしゃがみ込んだ。 手を伸ばし、蛋白質の塊を掴む。 ヌチャヌチャという何とも言えぬ擬音語が響く。 手袋越しでも伝わってくる。 生暖かく、そして冷たい。 吐き気がする様な見事なシンメトリー(対照的)。
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