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こういう情景でなければ、単なる死体いじり。
あんまり変人の扱いはされたくない。
フェイクは内心でそう思った。
死体を相手に検証を行うのは、検死官だけで充分だ。
自分もあまりこういうのは触りたくない。
だが、別に吐き気を催したりはしない。
もう、慣れたというのが正しい言語表現だろう。
どんな臆病者だって、何回か死体を見る度にそういう心理は麻痺してくる。
どうやら、このバラバラ殺人の犯人は、鋭利な刃物で切断を行なったらしい。
切口が至って滑らか。
一瞬で斬ったのだろう。
「よし、検死官の仕事は終りだ。
次は2階に。
――おっとその前に」
フェイクは、ポケットから何やら白い物が入った小瓶を取り出した。
蓋を開け、中から白い粉状の物――、を一摘まみ出した。
――塩である。
後ろを振り返り、それを死体に向けてかけた。
凄く微量だが、何もないよりはましだろう。
フェイクの、とても簡素な葬式である。
「すまないな、僕は酒を持ち歩いたりはしないんだ」
頭を下げ、謝る。
ここに住んでいた人達がどういう人間だったかは知らない。
だが、最後くらいは華を飾ってやろう。
そういった、死者への手向け。
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