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第二章 旅立ち
東京に行く日がきた。
その日の朝は普段より早く母が起きていて、体の具合がよかったのだろう、朝食を用意してくれていた。
おれに気付くと早く着替えてご飯を食べなさいと急かしていた。
おれは言われるまま、真新しいシャツとスーツに着替えて朝食をとった。
父にネクタイの仕方を教えてもらい、ネクタイをする。
自分の見慣れない姿に照れていると母はそのおれの様子を見て少し笑っていた。
父と母が駅まで見送りに来るみたいで三人で玄関を出る事に。
外はおれの門出を祝うかのように雲ひとつない晴天だった。
すると母が少し眩しそうにおれの方にカメラを構えて写真を撮ろうとしていた。玄関を出たところで、真新しいスーツにくるまったおれ一人の写真を一枚。
それから父にカメラを渡し母とのツーショットの一枚を撮った。
車に乗り、2、30分ですぐに駅に着いた。
切符を買い、父と母の分の入場券を買った。
それからホームへ、おれを先頭に三人で向かった。
ホームには電車が来ており、もうすぐ発車する雰囲気だった。
おれはすぐに振り返り母に「いってくるね。」と声をかけると、母は手で口を抑えながらなが涙を流していた。
おれはその姿を見て急に寂しくなり、涙を我慢して電車に乗った。
すると母が近づいてきて『気をつけていくんよ。』
電車のドアが閉まると、母は父に寄り掛かるように泣いていた。
電車が少しずつ動きだすと母は泣きながら何かをいっていた。
その母の姿が徐々に小さくなっていくに連れておれは涙を止める事ができず、声を出して泣いていた。
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