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初夏の匂いがした日。
私は蒸し暑い部屋に閉じ籠っていた。
片手にカッター。覚悟してた。
世界とさよならするって。
カッターを手首に当てた。
ひと呼吸置いた
『♪♪♪』
「…?」
外からリズミカルな音色が聞こえた。
窓を開けると隣の公園で一人、ギターを弾きながら歌っている。
「ストリート?初めてみた…」
曲が変わりゆったりとした曲になった。
歌詞を聴いて私はカッターを床に落とした。
そして泣き崩れた。
まるであたしに歌っているようなほど今のあたしに当てはまる曲だった。
その曲が終わると私は走って公園に向かった。
ギターを片付けている男。
「あのっ!!」
私は無我夢中で叫んだ。
『え?』
男は振りかえった。
背はあまり高くなく、撫で肩で目は薄い茶色で大きかった。
私は肩まで伸びた黒い髪を指でとかして
「あ、あの…さっきの曲…」『聞いてたの?』
「はい!家からですけど」
『そっか。』
「あの、さっきの曲もう一度歌ってください!」
『今の?いいよ。』
その人はギターケースを開いた。
何年も使っているような年期のあるギターだった。
「ありがとうございます!」私は頭をさげた。
そしてゆったりとした音色が流れはじめた。
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