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「陽平の容態は?」
コーチが走って俺の所にやって来た。
「今は寝ています。」
「そっか…。」
医者が俺とコーチを呼んだ。
「先生!!陽平は大丈夫なんですよね?!」
「チョット待っとけ!!先生が話してくださるから。」
コーチに叱られた。俺は病室のイスに座るとすぐに尋ねていた。
「佐藤 陽平さんは、心臓に重い病気をかかえてます。」
「心臓に病気?それは治るんですよね?明日は大事なバスケの試合があるんです!!」
医者は少し黙って、重い口を開いた。
「佐藤 陽平さんは、もうバスケットが出来ません。」
「えっ?意味が分からないんですけど。俺と陽平はずっと一緒にバスケしてきたんですよ、いきなり出来なくなるような病気のはずないでしょ。陽平のことは俺が一番知ってるんですよ!!」
自然と涙がこぼれてきた。信じたくないけど、心は医者の言葉をストレートに受け止めていたらしい。
「佐藤さんが、あともう一度激しい運動をして、心臓に負担をかけたら、命の保障は出来ません。」
コーチも落胆し、言葉が何も出なかったようだ。ずっと頭をかかえて下を向いていた。
俺は面会時間は過ぎていたが、先生に無理を言って、陽平の病室に入ることを許してもらった。
涙を止めるのに、すごく時間がかかった。トイレの鏡で初めて笑顔の練習をした…。
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