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俺はゆっくりと病室に入った。
ベットの上で寝ている陽平は、点滴の管やなんやらで、まさに病人だった。さっきまで一緒にバスケをしていたとは、とても思えなかった。
「んっ…。翔?」
陽平が目を覚ました。
「陽平、大丈夫か?」
「大丈夫。ゴメンね、試合前なのに心配かけて。」
「何言ってるんだよ、気にすんなって。」
「昔から心臓悪かったんだ…黙っててゴメン…。隠すつもりはなかったんだ。でも、バスケが楽しくて楽しくて、辞められなかった。翔と一緒にするバスケが楽しかったから…。」
部屋に入る前に、トイレでした笑顔の練習は、無駄だった。涙が止まらなかった。
「なっ、何言ってるんだよ陽平。今さらそんなこと言わないでも良いって。」
「そうだね、ゴメン…。明日の試合に勝てばインターハイか。明日も頑張ろうね…。」
そう言って、陽平はまた寝てしまった。
明日の試合に陽平は出られない。俺は涙を拭い、明日の試合に向けて、さらに勝とうという気持ちを強めた。
そして、ゆっくりと病室を出た。陽平に勝利を約束して…。
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