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3Qの始まりで、俺の不安は的中する。
前半の疲れを引きずった俺たちは、始まって3分で5点差にするどころか、点差は20点に開いてしまった。
ビーーーーッ
コーチもたまらず、タイムアウトをとった。
「45:25か、離されちまったな。お前らの力はこんなもんか?」
コーチは俺たちに声をかけるが、あまりの疲れように、誰も返事が出来なかった。
「ハァ、ハァ、やっぱり陽平の得点力がないと…」
「おい!!それは今日言わない約束だろ?!」
「でも…。」
その時、聞き慣れた声がした。
「やっぱり、ダメか~。」
みんなベンチから後ろを向いた。
「陽平!!!!!!!!!!」
みんな驚きが隠せなかった。
「何で、病院は?!」
「心配しないで、翔。試合が気になって来ちゃった。やっぱりエースがいないとダメやな。」
陽平が初めて自分のことをエースと言った。
「でも、もう陽平は…」
「試合が終わったらすぐに病院戻るさ。」
陽平は、しっかり話したが、顔色は悪かった。
「あと、3クォーター残り4分半か。コーチ!!俺を出して下さい。」
「出れるのか?」
「大丈夫です。4分半ぐらいなら。」
コーチは陽平を信じ、3クォーターの残り時間、出すことにした。
「よ~し、こんな頼もしいシックスマンはいないぞ!!お前ら、ひとまずあと4分半頑張れ!!」
「ハイ!!」
みんなの元気がいつのまにか戻っていた。
シックスマンの大切な役割を、陽平はすぐに果たした。
タイムアウトが終わり、チームはガラッと変わった。
「翔!!」
「頼んだぞ!!陽平!!」
キュッキュッ、シュッ、スパッ!!
陽平は、試合に出るなり5本連続で3Pを決めた。
ビーーーーッ
3Qが終わった。陽平のおかげで点数は45:40となり、5点差まできた。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…」
「大丈夫か?陽平。」
「なんとか…。」
「約束だ。4クォーター始まりは陽平は出ない。陽平がここまで頑張ってくれたんだ。あとはしっかりお前らがバスケして、勝ってやれ!!」
「ハイ!!」
「陽平、あとは任せろよ。」
「頼んだよ、翔…。」
そして、4Qが始まった。
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