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「陽平はオフェンスだけに専念してくれ。必ず陽平までパスを回すから。」
「分かった。」
俺たちは4人で、3Pだけは警戒しながらディフェンスをした。
2Pを入れられても、なんとか陽平が決めてくれて、2点差はキープ出来ていた。しかし、相手も陽平の3Pに対してはしっかりディフェンスしたので、点差が縮まることはなかった。
そして、点差は2点のまま残り20秒…。
相手は時間を使い始めた。さすがに陽平もディフェンスに参加した。とてもキツそうで、必死にディフェンスをしていた。ここまで必死な顔でディフェンスをする陽平を見て、ベンチのみんなは号泣していた。
「陽平!!陽平!!」
みんな顔をグチャグチャにして、声をからしながら、言葉にならない声を出していた。
残り10秒。会場の応援席や相手ベンチからカウントダウンの声が出る。
10!!…。
9!!…。
8!!…。
7!!…。
その時…
ピシッ!!
陽平がパスカットをした。会場がドッと歓声に包まれる。
カットしたボールは俺の所に転がってきた。
6!!…。
「翔!!」
陽平はもう前に走っていた。
5!!…。
「陽平!!頼む!!」
シュッ!!
俺は全ての力を込めてパスを出した。
4!!…。
パシッ!!
3!!…。
キュッキュッ、シュッ2!!…。
1!!…。
陽平が打った3Pシュートは、とても綺麗だった…リングに向かって、綺麗な放物線を描いた。俺が今までみた陽平のシュートの中で一番綺麗なシュートだった…。まるで時間が止まったかのように会場は静かになった。
そして…
スパッ!!
ビーーーーッ!!
ワアーーー
スゴイ歓声に包まれた。今日一番の歓声だった。でも、陽平にこの歓声は聞こえてたんだろうか…
陽平はコートの上に倒れていた。倒れている陽平の頭を膝にのせた。
「やったな!!やったよ!!陽平!!インターハイだ!!」
「うん…最後…ナイスパスやったよ…」
「またそんな褒めてないけど、やろ?」
陽平は少し笑って、「本当だよ…よかったね…翔…夢…かなったね…。」
「あぁ!!ついにインターハイだ!!陽平が強いって思うチームに会えるかもしれないぞ!!」
「そうだね…でも、強いチームにはもう出会ったよ…」
「えっ?!」
「インターハイに行くこのチームだよ…本当に強い…」
そう言って、陽平は息をひきとった…とても穏やかな表情をして…。
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