初めての再開

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鉄棒が一列に並ぶ遊具コーナーの方から父は歩いてきた。 緑の茂みをかきわけるように入ってきた図体のでかい色黒の男がやってきた。どんどん近付いてくる。 薄緑の作業着のようなものを着ている。 「水嶋さんですか・・」 俺は立ち上がっていた。 気持ちとは反対に体が反射的に立上がり、父親を歓待するように歩み寄っていた。 「おお・・元気そうやな」 父は、手持ちぶたさなのか、帽子を脱いで、もう一度かぶりなおした。 「はい・・・」 頭というより、首を軽く上下しながら挨拶する俺。 (なんか、ちがうなー) ちょっと想像してた。 抱き合って・・・ 「会いたかったよ」 「すまなかったな」 そんな再会。 現実は、こんなもんだ。 ジャ?ジの息子に作業着の父。 「すまんな。こんな格好で。 チビの夏休みの宿題で本棚作ってたもんだから・・・。 もっときちんとした格好してこようと思ったんだけど」 作業日は木くずだらけ。 首には汗の匂いがギチっと詰まったタオル。 俺って、完全についでか。 ついでなのか。   蝉の鳴き声が木々に反響して、夏本番といった感じだ。 公園にはボールを持った親子が表れ仲良くバスケット始めた。 子供がゴールに向かってボールを投げる。 ゴールに入らなかったボールを父親が拾い、フォームのアドバイスをしている。 その親子をぼぉーと眺める。 父が突然話しだす。 地面を見ながら。 「天気いいなあ」 「ですね」 「会社は楽しいか?」 「学校じゃないですから・・・。そんなに楽しくないですよ」 「まあ、食べれる程度に稼いでいけばいいさ」 豪快に笑う父。 この人はこんな笑い方をするんだな・・・。
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