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担任の山崎幸三(やまざきこうぞう)が教室へ入り、朝のホームルームが始まった。
「出席番号順に進路調査票を出せ~」
山崎の催促に応じ、生徒達がぞろぞろと教卓の上に進路調査票を提出していく。香苗も自分の番が来たのを見計らって提出しにいった。
「全員出したか~?」
提出された進路票を一枚ずつ確かめていく山崎。
「西野」
「はっ…ハイ」
山崎に名前を呼ばれた眼鏡を掛けた男子生徒は、今にも消え入りそうな弱々しい声で返事をし、ゆっくりと立ち上がった。
「進路調査票はどうした?お前だけ出ていないぞ」
「あ…ぁの…ゎ…忘れ…ました…」
「もっと大きな声でしゃべれ!聞こえん!」
「わっ…忘れました!すいません!」
「西野、お前の進路なんだぞ?そんなんでどうするんだ!」
「は、はぃ…す…すいま…」
「もういい、座りなさい」
「ぁ…ぁぃ…」
男子生徒はか細い声で返事をし、ゆっくりと席に座った。周りの生徒達のクスクスと馬鹿にした笑いがその男子生徒に向けられる。
「西野。昼休みに職員室へ来い」
「ぁ…ハイ…」
生徒達の笑い声が一層大きくなった。
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