第一章 黒衣の男

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 彼の名前は西野彰(にしのあきら)。自慢話にもならないが、香苗の幼馴染みである。  彰の両親は彰が幼稚園の時に病気で他界してしまい、そのため彰は中学までは児童擁護施設で暮らしていた。  香苗と彰が出会ったのもまた幼稚園の時で、彰はその頃から自分の意見をはっきり言わない、優柔不断でオドオドしている性格だった。  そのため、彰は幼稚園・小・中学と数えきれないほどの陰湿なイジメの対象となった。  小さい頃は香苗もそんな彰を可哀想に思い、イジメからかばっていたりもしたのだが今は二人共高校生。自分のことは自分で解決するべきだ。  高校生になっても彰は昔のままの性格でイジメにもあっているが、香苗はそのことに対して彰にいくらかたまに助言をすることはあるものの、必要以上に庇護しない。彰自身で解決するべき問題という考えもあるが、香苗も大学受験を控える身で彰に構っている暇はないのが正直なところであった。  友達の水樹は彰を「生理的に受け付けない男」と毛嫌いしているが、香苗は彰を嫌いなわけではない。ただ、幼馴染みとして香苗は彰に男らしく、強くなって欲しいとそう密かに願っていた。
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