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昼休み。
香苗と水樹が持参した弁当を食べ終った頃、西野彰は職員室から戻ってきた。
「か…かなえ…チャン」
戻ってくるなり彰は香苗に寄っていく。水樹が露骨に嫌な顔をする。
「どうしたの?彰」
「ぁ…ぁの…な、何か書くもの、貸してほしいん…だ…」
「いいけど、何で?」
「し、進路…票、放課後までに書けって…」
彰は手に持っていた進路調査票を香苗に見せる。
「自分のは?忘れたの?」
「ど、どこかで落とした…カナ…?」
「まったく…」
香苗は溜め息を吐き、自分のペンケースからピンクのシャープペンを取り出し彰に差し出す。
「これ、今日一日貸してあげる」
「へ…?で、でもぉ…」
「午後の授業はどうするの?貸してあげるから今日の授業が終わったら返してね」
「ぁ…ぁぃ…ごめんね…」
彰は香苗に心底申し訳なさそうに何回も頭を下げ、自分の席へと戻った。
その姿を見て香苗は大きな溜め息を吐く。
「かなさぁ~」
「え?」
「何であんなヤツに親切してあげるワケぇ?ほっときゃイイじゃん」
「まぁ…そんな深い意味はないけど…」
「うつるよぉ?ネクラ菌が」
「ネクラ菌って…」
「ホント、かなは人良すぎだって!あんなゴミ男にさ~」
水樹は心底呆れた口調で言う。彰は水樹に対して特に何かしたことはないのだが。
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