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放課後。
香苗は水樹からのマックへ行く誘いを断って、校門の前で携帯をいじりながら立っていた。彰に貸したシャーペンを返してもらうためである。
あの後、金本達は教室へ戻って来たが彰は午後の授業が始まっても戻って来ず、とうとう帰りのホームルームが終わっても戻って来なかった。
彰の携帯にかけたがなぜか繋がらないし、だからといって金本達に彰はどうしたのか訊くことにはかなり抵抗がある。
仕方なく、香苗はこうして校門で彰が出てくるのを待っていた。
あのシャーペンは買ったばかりの新品であった。なぜ新品の方を彰に貸してしまったのか、香苗は後悔していた。
あの彰のことだ。今日中に返してもらわなければいつなくすかわかったものではない。
「あれ?」
そうこう心配している内に、校舎の方から当の彰が真剣な顔つきで走って校門へ向かって来る。
「彰~」
香苗は手を振って彰を呼び止める。
「か、かなえ…チャン」
眼鏡も制服もボロボロになった彰が息を切らせながら立ち止まる。
「どうしたの?そんなに息切らして…」
「ご、ごめん!ちょっと急いでるんだ!」
そう言って彰は再び走って行ってしまった。
「あっ!ちょっと!あたしのシャーペン…」
校門に一人取り残される香苗。
「な、何なのよ、もう…」
何が何だかわからず、香苗はしばらく唖然として校門に立ち尽くしていた。
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