序章~鮮血の蝶は闇夜に舞う~

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 東京都渋谷区。  警視庁のパトカーが五台、耳を突き抜けるほどのサイレンを鳴らし、車線に沿って風を切り裂くように走っている。  警視庁刑事部捜査第一課に所属する小林紗恵(こばやしさえ)巡査は、一番先頭を走るパトカーの助手席に険しい表情をして座っていた。  今夜もまた殺人事件が起った。場所は地上を見下ろすように建てられた渋谷帝都ホテル。  今日10月20日は、兼ねてからその巧みな外交手腕をメディアに取り挙げられ、多くの有権者の支持を得ている内藤毅(ないとうつよし)外務大臣の58歳の誕生日パーティが渋谷帝都ホテルにて催されていた。  そこで渋谷警察署から警視庁に入った内藤毅外務大臣射殺の一報。  すでに多くの記者や野次馬達が駆けつけているらしく、現場の混乱が予測されたのでパトカーは急いで現場に向かっていた。 「緊張しているのか?」  紗恵の隣でハンドルを握っている上司の秋元浩二(あきもとこうじ)刑事部長が紗恵にそう尋ねる。 「いえ、さすがにもうそんなことは…」  小林紗恵は警視庁に入庁して今年で一年になる。
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