序章~鮮血の蝶は闇夜に舞う~

5/6
前へ
/559ページ
次へ
 現場である渋谷帝都ホテル地下駐車場に到着した五台のパトカー。  当初の予測通り、多くの報道陣と野次馬達が現場を囲むようにして集まり騒ぎになっていた。その野次馬達を渋谷警察署の警官達が現場に近付かぬよう制止している。 「警視庁です!一般人の皆さんは現場から離れて下さい!」  紗恵は現場を塞ぐ野次馬達にそう何度も呼び掛ける。  しかし、その紗恵の呼び掛けも野次馬達の騒音にかき消され、止むを得ず秋元を含む男性警察官が野次馬を力ずくで現場から引き離す。  ようやく野次馬達を引き離し、殺人現場への道が開かれた。  そこには今更驚くこともない、仰向けになり背中からコンクリートの地面上に血の羽を広げた内藤毅外務大臣の死体があった。  そして、その蝶の羽にまるで紗恵達を挑発するかのように「K」の血文字が残されていた。 「Κ……!」  紗恵の心に広がる、いとも簡単に殺人を行わせてしまったことへの悔しさと正体不明の殺人犯Κに対する憎しみ。 「小林」  拳を握り締め、怒りを現わにしながら死体を見つめる紗恵に秋元が背後から声を掛ける。その秋元の呼び掛けに紗恵は我に帰る。 「現場検証だ」 「は、はい、すいません!」  紗恵は速やかに現場検証を始める準備に取り掛かった。
/559ページ

最初のコメントを投稿しよう!

291人が本棚に入れています
本棚に追加