人形に

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ある日、一人のおばあちゃんが、いつも抱いている人形にボールペンで何か書いていた。 物の名前が繋がらない。それをどう使っていいかわからない。別の名前、別の使い道と繋がってしまう。異食(食べ物でない物を口にする)もある。フラつく割によく歩く。尿意便意はあるかもしれないけど、どうしたらいいかわからないから、リハビリパンツで生活し、トイレは定時の誘導と介助。会話も言葉がちぐはぐで大半は意志疎通ができない。人形が、その人にとって、本物の赤ちゃんになったり、何かの野菜になったり…その人形が今回はキャンパスかノートか、と思っていたが、とても真剣な眼差しで必死に書いている。しばらくしてそのおばあちゃんが、こっちを向いてニコッと笑った。よく見ると人形にはいびつな字で… 「いつもおせわになってすみません ありがとう」 と書いてあった。
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