或る殺人犯の話

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 或る殺人者―――此処では“彼”と名付けましょう。彼は人の役に立つことが大好きでした。ボランティア、募金、あらゆることをしました。しかし、まだまだ彼の欲求は満たされません。  そこで、彼はとある女性に訪ねました。 「僕は人の役に立ちたいんです。何かいい方法はありませんか?」  可哀想に、その女性は何か、いや誰かのせいで疲れきっていたのでしょう。ぼんやりと目を開け、焦点の合わない目で彼に呟きました。 「そうね…、アナタがアタシの嫌いな人を殺したら、アナタはアタシの役に立つのじゃないかしら…、まぁ、そんなこと、できないでしょうけど」  この言葉で、彼のプライドに火がつきました。『人の役に立つことで、自分にできないことがあるはずがない』、彼はそう思いました。そしてにこり、笑って言いました。 「その人の名前を、教えてくれますか?」  彼女は呟きました。 「…クレバーソン」  翌日、クレバーソンという男性が殺されました。女性は恐ろしくなり、どこかへ引っ越してしまいました。彼はそれを知り、怒りました。 「彼女は、感謝の一言も言いに来ないのか。そんな女性だったとは」
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