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部屋に戻った彗は、寝台に倒れ込んだ。
ここのところ、舜期は部屋を空ける事が多い。
帰りは大抵明け方になる。
部屋を抜け出す口実を考えなくていいのは助かるが、少し寂しい気もした。
夕麗の一件以来、街に出る回数が増えた。
『よくある事よ』と夕麗は言った。
彗は知らなかった。
天災による不作、貴族達の厳しい賦税に対する民衆の反感、地方では反乱も起こっているらしい。
都では、貴族の横暴に泣かされてきた庶民達が、この間の冤罪事件で不満を募らせていると聞いた。
彼等に支持を受ける蒼祥葵が都の警備に当たっていることで、辛うじて爆発を抑えている。
知らないことは罪だと思う。
怖いとも。
『正しいのか』と問われれば分からない。
それでも、目の前に起こることから目を背けたくはなかった。
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