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「動き出したぞ」
匡李の言葉に舜期は顔を上げた。
「北から……長春の郷城がひとつ落ちた」
「まさか……」
舜期は目を見張る。
「それほどに、民の怒りは高まっているらしい……慶可を北に向かわせた」
「……殺すのですか?」
「抵抗すればな」
舜期は目を伏せる。
『反乱』である。
この国は崩壊寸前まで来ている。
長い間、貴族優先の政策の上に胡座をかき、私利私欲に走ってきた者達の多くはその事に気づいてすらいない。
「反乱など力でねじ伏せられる」
そう高を括り、民衆の苦しみや怒りなど一顧だにしない。
匡李の父である前王は、長く病の床にいた。
その間の負債は想像以上に大きい。
「失礼します」
扉を叩く音と共に、部屋に入って来たのは杜梨旺(ト・リオウ)だった。
わずかだが緊張の色が見える。
匡李はサッと腰を上げ、梨旺に歩み寄る。
その顔に先程までの憂いはない。
舜期は上着を羽織り、部屋の奥へ姿を消した。
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