「正体」

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■■■■■■■■■■■■■■■ 麗江を出て五日、鵬は船の上にいた。 馬で三日、開封(カイフォン)で足の速い帆船に乗り換えた。 慣れない馬に乗り続けていたせいで、全身筋肉痛だ。尻も痛い。 鵬は顔を上げ、左右に続く翠(ミドリ)の山々を眺めた。 帆に初夏の風を孕(はら)み、船は滑るように緩やかに流れる大河を進んで行く。 「なぁ」 「ん?」 「長春に行くんじゃないのか?」 「ん……」 この先、河は大きく左に流れを変える。 長春とは別方向だ。 鵬は船板に寝転がる龍伯の顔から、日除けに広げた本を取り上げた。 龍伯は眩しげに目を細め大儀そうに体を起こすと、ぐるりと視線を巡らせる。 少し(かなり?)風変わりな皐家の使用人は、不思議な程にスルリと鵬の心に入り込んできた。 飾り気がなく、遠慮のない物言いをするので、鵬もすぐに気を使うのをやめた。 饒舌なわけでもない、かと言って寡黙なわけでもない。 昔からの友人のように、沈黙が苦にならず、側にいるのが自然に感じた。 間もなく、船は方向を変え左岸にある船着き場に止まった。 「降りるぞ」 「えっ」 龍伯はサッと立ち上がると、荷物を肩に船を降りる。 鵬は慌ててその後を追った。
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