瑠璃の華

18/22
前へ
/1106ページ
次へ
「ら、藍嬰、今日は一緒にいてくれない?」 「お互い本音で話し合うなら、二人きりの方がいいですわ」 にっこり笑って(目は笑っていない)、藍嬰はばっさり彗の申し出を拒否した。 何時も通り夕餉の皿が並べられた一室で、彗は不安と落ちつかなさと、居たたまれなさに苛まれながら、匡李を待っていた。 (すっごく怒ってたな…………匡李) 今朝は朝餉もとらずに朝議に行ってしまった。 頬を叩かれるのは子供の頃以来だと、彗は思い返す。父はあまり怒らない人だった。 彗の無鉄砲な行動に最も振り回され、叱ったのは伯夕だ。 「はぁ~」 卓子に突っ伏して、ため息をつく。 龍の形に彫刻された人参を見つめ、うねる身体の鱗を視線でなぞる。 (よく出来てるなあ…………) 風に靡く髭と鬣(たてがみ)、見開いた眼に、開いた口から覗く牙、今にも動き出しそうな迫力がある。 龍は王の象徴であり、手に持った宝珠は力の源とされる。 わざわざ水晶を持たせている辺り、流石と言うか、無駄というか………… そんな取り留めの無いことを考えていると、扉の外から女官が王の到着を告げた。 彗は慌てて立ち上がる。 (ど、どうしよう…………) 「…………何をしている?」 「今朝は、勝手な行動でご迷惑をお掛けし、本当に申し訳ありませんでした」 彗は床に跪き、頭を下げる。 暫しポカンと見つめていた匡李は、慌てて彗の腕を掴み、顔を上げさせた。 「そんな事、しなくていい。取り敢えず椅子に座れ」 匡李は半ば抱えるようにして、彗を椅子に座らせた。
/1106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10633人が本棚に入れています
本棚に追加