第二話:さて、騒動が始まります。

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「海藤翔はいるかっ! 御用改めであるっ」  ちょっとだけ律子ちゃんの将来を心配して安全な将来設計をしてやろうかなと考えていると、部室の壁を揺らすほどの大声を出しながら妙なテンションの変な男が乱入してきた。 「おおっ、告白して玉砕された回数一三〇回で、七曜学園フラレ男記録を絶賛更新中である風紀委員長の中川君ではないか!」  説明口調でありがとうと言いたいところだが、火に油を注いでどうするのか、荒い息を吐きながら部室内を見渡すその目は血走っていて野獣のような大男が部長の前に歩み寄っていた。 「あっ……ご、ごめんね? 気に障ったなら謝るよ、うん、うん」  一人スキューバーをしているかのような鼻息で部長を見下ろす大男は声は出さずに鋭い眼光で部長を威嚇していた。  この人は七曜学園風紀委員会委員長の中川卓郎(なかがわたくろう)先輩。  ドアが小さく見えるほどの巨体で身長は一九〇を超え、高校生には見えない風貌をしている。  その理由は全身が茶色に輝く剛毛に覆われているので、よく熊に間違われてしまう奇特な人なのだ。  街中でも目を惹くのだが、一年の頃に林間学校で山を登っていたら地元の人に熊と間違われて警察に通報され、猟友会は出てきたらしいのだが、それで終われば笑い話だったのに、「熊ではなくてエイリアンだ」って話に発展して自衛隊まで駆けつけてくる始末で、危うく撃ち殺されそうになった逸話を持っている人だ。
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