270人が本棚に入れています
本棚に追加
「ボンジョルノ、ともちゃん」
気色悪い声が聞こえ、背中を悪寒が走り抜けた。
「……遅いですよ、部長」
「いやあ、ごめんね。ちょっとそこで素敵な女子生徒に道を尋ねられたから、案内して来たら遅れたんだよ」
「…………そうですか。それで、どこまで案内したんですか?」
「駅前のケーキ屋さんだよ」
この七曜学園(ななようがくえん)から徒歩一〇分の距離だな。放課後になってすでに二時間、俺が待ちぼうけを受けた時間は一時間と五十分。往復しても二〇分くらいしか掛からない場所で、これほどまでに時間が掛かった事に大体の想像ついてしまう自分が嫌だ。
「一緒にケーキを食べましたね。ついで、あわよくば女の子も一緒に食べようとか考えていたでしょ? この変態送り狼が」
「わあ、すごい。さすがはともちゃんだね……まさしくその通りだよ」
棒読み気味に感情を押し殺して言った俺にまったく感心も示さず、能天気に拍手などしている変態男。少しは自粛しようって気がないのかね、この人は。
この変態丸出し(いや、実際に変態だが)の男――名を海藤翔(かいどうしょう)と言い、三年の先輩で一応は俺の入っているクラブの部長をしている偉い人なのだが、人望は限りなく……いや、まったくない。
最初のコメントを投稿しよう!