第零話・爽やかな朝

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      (一) 十二月も押し迫る、十一月の寒い朝。 私はご主人様の声で目が覚めた。 「すき焼き食べたい~ムニャムニャ…」 のんきな寝言だ。 私はご主人様の足の上から、ゆっくりと体を起こした。 ここ最近、すっかり、寒くなった。 寒い時期になると、私のご主人様は布団の中、足元付近にアンカーを入れる。 だから私は、その時期は足の上で寝るのだ。 重い、と言いながらも、人の良いご主人様はどかさずにいてくれる。 とても猫馬鹿な人なのだ。 昼過ぎ、ご主人様は私に新しい水と餌を与え、仕事に出かける。 「じゃあね、良い子にしてるんでちゅよー❤」 頭をなでなでして、家を出る。 ・ ・ ・ ご主人様が出ていってしばらくしてから、 私は家を出た。 外出してる、なんて事がバレたら叱られるかな? なんせ、ご主人様は私に 菌が付いたり、病気になることを怖れ、私を家から出そうとしない。 全く、過保護な人なのだ。 それが嬉しかったり、困ったり。 私はてくてくと歩き、15分歩いたところにある、路地裏へと入った。 ━そこにあったのは古びた感じのお洒落なアンティークショップ。 看板には【猫又堂】と書いてあった。 私が来たのに気づいたのか、入り口の扉が開いた。 「もう、遅いよ!茶亜璃」 出てきた少年が、私に怒鳴る。 金の瞳を細くさせて私は笑った。 「すまないにゃー」
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