第零話・爽やかな朝

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びゅううっと北風が吹いた。 入り口の前で立ちはだかる少年を見つめ、私は言った。 「小言は中で聞くから、早く入れては、くれニャいか?猫は寒いのが苦手でね?」 少年は、ジロリと睨むと、渋々ドアを開けた。 私は隙間からスルリと中へ入る。 トテトテと進み、店の隅にある椅子の傍まで行く。 そこがいつもの私の定位置だった。 少年がドアを閉め、私の元へとやってくる。 「まったく、アンタが遅れたせいで店の掃除が大変だったんだから!」 人差し指を向け、不満をもらす。 私は何食わぬ顔で答えた。 「いいではニャいか。たまにはそれぐらいしたって。」 少年は顔を真っ赤にして怒鳴った。 「第一なんで、悪魔の俺様がこんな寂れた店を掃除しなきゃいけないんだよっ!」 プリプリ怒ってジタンダを踏む。 私は笑って言ってやった。 「それはおまえがドジを踏んで厳罰として魔界を追い出されたからだろ、沙良。」 そう、少年の名はサラ。 ドジな小悪魔。 ドジばかりなので、呆れた父親の大魔王さんが、修業という名目で人間界に。 行き場をなくして途方に暮れていたところを私が拾ってやったのだ。 人間界では沙良と名乗っている。 赤茶色の髪と緑色の瞳が特徴だ。 ドジなくせにとても負けず嫌いで、プライドが高い。 「さっきから、ニャーニャーうるさいんだよっ!早く変身して店を開けやがれっ!」 沙良がタコみたいに顔を赤くして言った。 ━ニャーニャー鳴くのは猫だから仕方にゃいだろう…?
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