序章

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時は西暦15XX年、度重なる戦の傷跡残るこの日本はその狂気による障気から生まれた魑魅魍魎の跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する地になっていた……… 時は少し流れ、ここは山あいの名もない村…… 青々と生い茂った草村を、子供達はキャッキャと笑いながら駆けている。近くには、それを横目に微笑みながら活き活きと畑仕事に勤しむ大人達。長閑な長閑な風景だった。 「煉(れん)!昼飯の時間だぁ!」長閑な風景に声が響いた。 煉と呼ばれた幼子は、草村を駆ける子供達の中からこちらを振り向いた。 ボサボサな栗色の髪の毛、ふっくらとした顔からは屈託のない笑みがこぼれていた。しかし……煉は他の子供達とは違いがあった。 煉の右目はまるで、宝石の様に透き通った綺麗な緋色をしていた。両の瞳の色が違っていたのである…… この時代、煉の様に異形(煉の場合は右目)の子供達は、鬼子・忌み子と村に災いをもたらすと恐れられ捨てられるか殺されるという悲しい結末が待っていた。しかし……煉は生きていた。他の子等となんら変わりの無い屈託のない笑顔でいられる。その笑顔を見る限り、この村が平和で争いなど無い村だと見て取れる。
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