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「飯だぁ!!」
煉は無邪気に父・与一の元に駆けていった。それを合図に周りの大人達も我が子を呼び、皆一斉に昼を取り始めた。
与一の隣では、泥だらけの手をすぐ横の小川で洗い、風呂敷の中から握り飯を取り出す母・沙希の姿があった。
「母ちゃん!握り飯早くおくれよ~!!」煉が沙希に急くと、「煉は良く食べる子だこと!早く大きくなるねぇ(笑)」と、沙希が優しく微笑みながら握り飯を手渡した。
煉が握り飯を頬張っていると、
「煉ちゃん、早く遊ぼう!!」と、後ろから煉より少し上位の歳の子供がにっこり笑いながら呼んでいた。
「煉!!弥太郎が呼んでるぞー!」与一に急かされ煉は口一杯に握りを入れると、
「ほうひゃん、ひゃあひゃん、ひっへふふ!!」全く喋れていない煉を与一と沙希は大笑いしながら見送った。
昼飯を食べ終わると与一は腰を上げ空を見上げた。見ると山あいから見える遠くの空を厚く黒い雲が微かに顔を見せていた。
「ちょっと村長探してくら!」与一は言うや否や立ち上がり駆けていった。
暫く、戻った与一は少し不安げな表情で、
「沙希、今日は少し早めに切り上げるぞ!」キョトンとした沙希に続けて、「今夜は荒れそうだ。」と、与一は先程より近くにあった暗い雲を見つめ呟いた。
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