序章

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少し赤味の差した道を与一と煉は歩いていた。 煉は弥太郎と遊んでいる最中に無理に連れ帰られた事で少しむくれていた。 「煉、そう怒るな(苦笑)今日は少し荒れそうだ、また明日遊べばいいさ!」与一が宥め(なだめ)るが煉は相変わらずむくれていた。 家が近くなるにつれ旨そうな香りが漂ってきた。与一達より先に帰った沙希が早々に晩の支度をして待っていた。先程までのむくれは何処へやら、煉は駆け足で土間の戸を開け、 「母ちゃんただいま!!!腹減ったよぉぉ!!!」少し遅れて「ただいま!」与一も土間の戸をくぐった。 「おかえりお二人さん!」 沙希の優しく大きな声が響いた。 囲炉裏を囲みながら沙希の作った雑炊を食べていると、風で戸が鳴り始めた。それから暫くすると雨がザァザァと降り始めた。 「来たなぁ。」与一が呟くと、「そうだね。」沙希も少し不安げに答えた。 「これ以上強くならなきゃいいが……」与一の不安も虚しくその後も雨足は強くなる一方であった。
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