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「沙希、畑が心配だ。少し様子を見てくる!」そう言うと与一は立ち上がった。沙希は与一の肩に蓑を被せ笠を手渡すと、
「行ってらっしゃい、気をつけて。」沙希の言葉に頷くと笠を被り与一は畑へ向かった。
どれ位の時が経っただろうか……。腹が膨れてうとうとしている煉を横目に、畑を見に行ったまま帰らない与一を沙希は心配しながら待っていた。
外では未だ止まない雨音が鳴り響いている。雨足が強くなるにつれ沙希の不安は一層増していった。
いてもたってもいられなくなった時であった。『ザクザクザクザク』遠くから足音が近づいてくるのに気付いた沙希は、手拭いを持つと土間まで行き戸が開くのを待っていた。
『ガラッ!!ピシャッ!!』乱暴に開かれた戸口に顔面蒼白の与一が立っていた。
「おかっ……!?どうしましたっ…!?」ただならぬ様子の与一に沙希は声を詰まらせ問う。
「ばっ、化け物が……村が化け物に!!……早く……早く逃げるんだ!」
何が起きているのか理解できないでいる沙希を後目に、与一は冷たく濡れた手で煉を起こし抱き抱え、
「沙希っっ!逃げるんだ!!」
そう言うと与一は沙希の手を引き外に駆け出した。
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