序章

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それからどの位時間が経ったであろう。空もすっかり白みが差してきている。あんなに激しく降り続いた雨もいつの間にか止んでいた。 煉は未だに泣いていた。しかし、いてもたってもいられずに泣きながら洞穴から出ると重い足を引きずる様に村へと戻っていく。 暫く歩き開けた道に出るとそこには……無惨に殺され、食い散らかされた骸の山があった。そこかしこに焦げた家の残骸がプスプスと音を立てている。まるで……地獄絵図……その言葉が当てはまる様な光景が広がっていた。 幼い子供にはまだ今の状況を判断する事などできず、ただただ呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。 それから二週間後…… 一人の侍が旅の途中、山あいで見つけた小さな村を訪れた。しかし……村はほぼ焼き崩れ今は人の営みなど微塵も感じられなかった。 村の中を見て回ると開けた場所に行き着いた。其処には土が大小幾つも積み上げられそのすべてにそっと石が置かれていた。 「まるで…まるで墓の……様だな。」侍がそっと目を横に向けると、焼け焦げた柱にそっと寄りかかり、げっそりと痩せこけた片方の目が不思議な色をした子がぼーっと空を眺めていた。 「坊、これは坊が1人で作ったのか?」目線を全く変えずに答えた。 「うん………。」侍は静かに続けた。 「村のもの達か?」 「うん………。」 「悲しくないのか?」 「もう…涙も出ないんだ。たくさんたくさん泣いたから……。」 「そうか……。坊、これからどうしたい?」 「俺、強く…強くなりたい……死んだ父ちゃんと母ちゃんが強くなって生きろって……。」目からは溢れんばかりの涙がこぼれ落ちていた。 「そうか……儂と、来るか……??その強くに少しは近付けるかもしれんぞ?」侍はそっと指で涙を拭ってやると強く頷くその子の手を取り、墓にそっと手を合わせ2人で村を旅立っていった。
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