第一話

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優希が隣で嬉しそうに笑ってる。 どんな些細な事でも、くだらないネタ話でも、俺が言うと笑ってくれる。 それが嬉しくて、いつでも笑わせようとしてる俺がいる。 隣に彼女の笑顔がある時が一番の幸せだからだ。 この空の下で、この広い世界でずっと一緒にいられる。 これ以上の幸せが俺に有るだろうか? 気が付くと顔がニヤける。 「どうしたの…? 急に笑ったりして。」 「なんでもねぇよ!」実は更に顔をニヤけさせて優希の手を引っ張った。 「えっ…!?わわ……。」 子供のようにはしゃぐ俺を見て戸惑いが隠せないのか、優希は大げさに慌てる。 「実…今日なんか変だよ…?」 優希は心配そうに俺の顔を覗き込む。 「俺はいつも通りだぜ。」 そう、俺はいつも通り。 この変わらない日常があるから。 この変わらない毎日が俺を支えくれてる。 変わらない毎日なのに飽きが来なくて、それでいて色濃く染まっていく。 いつも通りなのにこんなに嬉しい。 「ここから見る夜景、いつ見ても綺麗だよな。」 いつの間にか辺りは暗い。 眩しいほどの光が夜景を綺麗に彩っている。 「うん…。」 優希は嬉しそうにその夜景を見つめている。 そんな優希の肩に、俺はそっと腕を添えた。 「実…。」 唇が重なる。 まだざわめきの残る夜道、二人は街の電灯に照らされながらキスを交わした。 すると、優希が俺の肩に倒れ込んで来る。 「どうしたんだよ?」 実は心配そうに聞く。 でも返事が無い。 「おい!」 「……。」 優希は何も言わない。 一瞬疲れて寝ているのかとも思った。 でも。 寝息さえも聞こえて来ない。 「優希!」 俺はひたすらに優希の名前を呼んだ。 でも一切返事は返って来ない。 その後…救急車のサイレンが鳴り響いた。
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