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「それから…ぼーっとして…ん?いや…何かあったような…」
「アリス」
突然後ろから声がかけられた。
「?」
「おかえり」
「え…あの…」
―背、高いなぁ…というか…髪も目もピンク?でも…髪は綺麗だな…もっと伸ばせばいいのに……そんなことはいいよ。何で、何で、人間に耳と尻尾がはえてるんだよ!!
「どうしたんだ?具合が悪いのか?」
男は有寿の顎に手を近付け…有寿の顔を自分の方に向ける。
「え…あ、いえ」
有寿は真っ赤になりながら目をそらしたが、その長身の男の顔が近付いてきた。
「あ…あの!!」
有寿は慌てて叫んだ。するとその長身の男は少し離れたが、手をどかそうとはしない。
「名前…名前、聞いてませんでしたよね?俺は有寿。若葉有寿。彼方は?」
「俺はチェシャ猫」
チェシャ猫と名乗った男はようやく有寿の顎から手を外したが、今度はその手を有寿の頬に持っていく。
「チェシャ猫って…」
そんな事は気にせずに有寿は何か考え事をしている。
「…いや、でもまさか…よし!考えてても駄目だ聞くか!」
「あの…チェシャ猫さん?」
「呼び捨てで構わないよ、アリス」
「あ、はい…あの…」
「何?あ、後敬語じゃなくていいから。そんな他人行儀な」
「あ…うん…。それで…チェシャ猫って、もしかして…『不思議の国のアリス』の、チェシャ猫?」
チェシャ猫は不思議そうな、いぶかしげな顔で有寿を見ている。
「あ、いや、すいません。そんなわけないですよ「そうだよ。というか、忘れちゃったの?アリス」
チェシャ猫は驚いたような顔になってアリスを見る。
「え?いや…初対面じゃないの?」
「…まあ、ゆっくり思い出すといいよ」
チェシャ猫は優しい笑みを浮かべながら、やはり優しい声で有寿に言った。
「え…?」
「それより…時計ウサギは?」
「?」
「ここに来る時いたでしょ?」
「え…と…」
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