杭。

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杭。

学校。 俺のクラスはおかしい。 いや、学年全体と言っても過言ではないだろう。 授業中も、休み時間も喋らない。 ぴくりともしない。 俺も雰囲気にあわせて静かにしていたが、何なんだろうか? 他の学年もそうだ。 トイレに行く時以外、机に座って動かない。 弁当もその場で食べる。 ずっとクラスに居る先生すら、俺等を監視している様に見える。 繰り返す意味不明の日課に、俺は頭痛すら覚えていた。 入学する前の友達もだ。 入学するまで、あんなに明るかったクセに。 何がどうしたのか。 別人みたいに、その場に座って動かない。 無表情の面々。 沢山のマネキンがそこに在るみたいだ。 俺は、入学式当日風邪で休んでしまっていた。 ――入学式に、何かあったのだろうか? そう思ってみるものの、口には出さない。 そんな雰囲気じゃない。 重々しい静寂。 動かない生徒。 ――とにかく、もう限界だ。 俺は立ち上がって、生徒達に叫ぶ。 「どうしたんだよ皆!なんで喋らないんだ!」 俺は机を引っくり返し、先生に掴みかかった。 「なんなんだよ、おかしいだろッ!!」 と、信じられない事が起こった。 ――俺は先生に殴られ、床に倒れた。 何が起きたのか、全く理解できなかった。 と、全く動かなかった生徒達が、動き始めた。 手に思い思いの武器を持っている。 ナイフ。 包丁。 スタンガン。 斧。 バット。 それらを手に持ち、近付いてきた。 無表情のまま。 「なんだよ……なんなんだよ、来るなっ」 腰に力が入らない。 真っ青になって、俺は震えた。 生徒達はなおも近付いてくる。 元友達だった奴に、バットで殴られた。 後頭部を強く打ち、倒れ込む。 スタンガンが肩を襲う。 「うぁああああああッ!!」 びくん、身体が痙攣した。 硫酸をかけられた。 じゅ、という音と共に、目が見えなくなった。 カッターで、肩を―― 木刀で、頭を―― 痛い。 痛い―― それから、数分。 最後に頭を金属バットで思いっきり打たれた彼は、既に死んでいた。 ぐしゃ、頭が潰れる。 ピンク色の物体が溢れて、床を汚した。 先生は無表情のまま呟いた。 「――出る杭は打たれるのだよ」
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