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長くてウザッたかった梅雨も明け、季節はいよいよ初夏を迎えていた。7月に入ると太陽はますます日照り、アスファルトの上は暑さで歪む。日中は早朝から蝉が鳴き、夜は蛙と鈴虫の大合唱。身体を舐めまわすぬるい風を感じると、梅雨が狂おしいほど恋しくなり、温室効果ガスとそれに伴う地球温暖化を本気で恨みたくなる。
地球上の全人類が一日中息を止めていたら、どれだけの二酸化炭素が削減できるのだろう。
そんなとりとめのないことを真剣に考える、平日の朝。
「ふぁぁぁ~」
自分の机にへばり付き、人目も気にせず大口を開けて欠伸をする。いやはや、学校というものはめんどくさいことこの上ない。
「秋人、お前朝からへばってるな」
倉本司(くらもとつかさ)が呆れを大分に含んだ声で話しかけてきた。
「見えるか?俺の後ろにへばり付く亡霊が」
「ん?亡霊のような秋人がか?」
「何でもいい・・・」
会話のキャッチボールが億劫になり、適当に返事をし、机とキス。
だいたいなんで朝っぱらから「男の敵」としゃべらにゃならんのだ。この男――倉本司は学年一の美形。いや、学校一の間違いか。180センチの長身に、長めの前髪から覗かせる切れ長の眼。顔のパーツ一つ一つが整っていて、基本的に友達になりたくない奴ナンバー1。しかもダントツ。流し目なんてされた女子なんかは、即フォーリンラヴ。しかし言い寄って来る女子は星の数ほどいるのに本人には全くその気なしときたもんだ。それがまた波紋を呼び、同学年だけでなく今や2,3年生のお嬢様方にもモテている。
容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群、才色兼備とはまさにこのことだ。
うぜぇ。マジで思ってた。いや、男なら誰でも嫉妬するだろ?
しかし、普段はクールで分かりにくいが、意外と情に厚い。そのことを知ってからは一応親友的ポジションについてる。
窓の外を眺め、一人ごちる。
「夏だなぁ」
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