当たらずとも遠からず

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「どうした秋人、いつにも増して生気が感じられないぞ」  放課後の教室で司が声を掛けてきた。 「わかる~?」 「ああ、アホ面してる」 「うるせぇっ」  ったく、司は心配してるのかどうかいまいち分からん。お前の本心理解できる奴って大物だよな、きっと。 「その様子じゃ、どうせ幼馴染の彼女絡みだろ」 「ちっ、分かってるなら傷口広げるようなことするなよ」 「別にそんなつもりはないんだがな」  心底心外だと言うように肩を落としてみせる。 「どーだか」  仏頂面している俺を見て、司は目を細める。 「なんだよ」  俺が問いかけると、 「ご愁傷様」  それだけ言い残して薄情な友人は颯爽と教室を去っていった。腹立つな本当に。  教室で一人時間をつぶして、空が茜色になりかけた頃に下駄箱へと向かった。別に居残りさせられていたわけじゃない。これも“彼女”に会わないため。誤解のないよう言っておくが、カレシカノジョのカノジョじゃない。断じてそれはない。以後、肝に銘じておくように。  スクールバッグを担ぎ、校門へと向かう。ヒグラシの悲しげな鳴き声がどこからともなく聞こえてくる。まるで俺の未来を暗示するかのように・・・・・・って、それはない!あってなるものか!  校門に近づくにつれて、門柱に誰かが寄りかかって立っていることがわかってきた。  姿確認。 ――げっ  極力顔を合わせぬように素通り決定。 「ねぇ」  例の彼女に呼ばれる。  無視。秋人、振り向いたら負けだ。 「どうしたのかな、秋人君」  猫なで声で俺の名前が彼女の口からつむがれる。思わず寒気を催し、冷や汗が背中を伝う。 「・・・・・・」  ただならぬ殺気を感じ、結局俺は振り向く。チクショウ、俺の意気地なし!  口調が妙に優しいとき、こいつはかなり怒っている。長年に亘る経験の基、培われた知識。ああ、悲しきかな。 「なんだよ、瑞穂」
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