当たらずとも遠からず

8/8

14人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
 そう、こいつの名前は綾崎瑞穂(あやさきみずほ)。一つ年上の、俺の天敵にして幼馴染。東雲高校2年6組所属。部活動は俺同様、帰宅部。成績優秀、容姿端麗の我が校のプリンセス。その人気はファンクラブが立ち上げられるほど。言い寄る男は数知れず、フッた男も数知れず・・・。  身長160センチ。体重・・・・・・はさすがに知らん。スタイルはモデル顔負け。子顔でパッチリ二重。すうっと通った鼻筋、ほっそりとした顎。髪は少し茶色がかり、背中まで伸びるノングヘア。 「どこをとっても見劣るところなどない。まさに神の申し子と呼べる存在!!――ファンクラブ会員No1さん談」  だがっ!俺は声を大にして叫びたい。外見に騙されるなと!  普段の奴は猫かぶりもいいとこだ。俺はそんな瑞穂の学校生活を垣間見て心底驚いたもんだ。俺に対する態度との違いには、もはや閉口するしかない。 「これだけ待たせといて、その言い草はないんじゃないの?秋人」  なおも優しい口調。だが、目が笑ってないぞ、目が。 「別に待っててなんて言った覚えはない」  瑞穂の眼光が鋭さを増す。 「こんな時間までいったい何してたの」 「瑞穂に教える義理はない」 「お腹空いたな」 「あっそ」 「奢って?」 ――やっぱりそうくるか。 「生憎と今俺金欠なんだわ。悪いね」 「ふぅ~ん・・・・・・・・・それにしても暑いわね」  瑞穂は制服の首元をパタパタとさせて風を送っている。そんなに広げたら谷間が・・・ 「どこ見てんのよ」 「べ、別に」 「6限目。私に色目使ってたでしょ」 「何のことだ?」  声が上ずる。 「惚けないで。私視力いいの。ああ、秋人にそんな目で見られてたなんて、私心外だわ・・・」  明らかに演技と分かる落ち込み方。それでも、俺に対する効果は抜群だった。  当たらずとも遠からず、俺だって最初からお前だってわかってりゃ、色目なんて使わなかったのに・・・・・・。 「誰がお前なんかに色目つか――」 「秋人」 「・・・・・・」 「奢って?」 「・・・・・・ハイ」  俺はがっくりとうな垂れ、真っ白になるのだった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加