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そう、こいつの名前は綾崎瑞穂(あやさきみずほ)。一つ年上の、俺の天敵にして幼馴染。東雲高校2年6組所属。部活動は俺同様、帰宅部。成績優秀、容姿端麗の我が校のプリンセス。その人気はファンクラブが立ち上げられるほど。言い寄る男は数知れず、フッた男も数知れず・・・。
身長160センチ。体重・・・・・・はさすがに知らん。スタイルはモデル顔負け。子顔でパッチリ二重。すうっと通った鼻筋、ほっそりとした顎。髪は少し茶色がかり、背中まで伸びるノングヘア。
「どこをとっても見劣るところなどない。まさに神の申し子と呼べる存在!!――ファンクラブ会員No1さん談」
だがっ!俺は声を大にして叫びたい。外見に騙されるなと!
普段の奴は猫かぶりもいいとこだ。俺はそんな瑞穂の学校生活を垣間見て心底驚いたもんだ。俺に対する態度との違いには、もはや閉口するしかない。
「これだけ待たせといて、その言い草はないんじゃないの?秋人」
なおも優しい口調。だが、目が笑ってないぞ、目が。
「別に待っててなんて言った覚えはない」
瑞穂の眼光が鋭さを増す。
「こんな時間までいったい何してたの」
「瑞穂に教える義理はない」
「お腹空いたな」
「あっそ」
「奢って?」
――やっぱりそうくるか。
「生憎と今俺金欠なんだわ。悪いね」
「ふぅ~ん・・・・・・・・・それにしても暑いわね」
瑞穂は制服の首元をパタパタとさせて風を送っている。そんなに広げたら谷間が・・・
「どこ見てんのよ」
「べ、別に」
「6限目。私に色目使ってたでしょ」
「何のことだ?」
声が上ずる。
「惚けないで。私視力いいの。ああ、秋人にそんな目で見られてたなんて、私心外だわ・・・」
明らかに演技と分かる落ち込み方。それでも、俺に対する効果は抜群だった。
当たらずとも遠からず、俺だって最初からお前だってわかってりゃ、色目なんて使わなかったのに・・・・・・。
「誰がお前なんかに色目つか――」
「秋人」
「・・・・・・」
「奢って?」
「・・・・・・ハイ」
俺はがっくりとうな垂れ、真っ白になるのだった。
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