高梨社長の言葉

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「別れろって、どういうことですか?」 「私には分かるのよ。吉川さんの気持ちが……だから好きじゃないなら早く別れなさい」 そう言った高梨さんの表情が暗くなった。 「そ、それって、どういうことか、僕にはさっぱり分からないんですが」 「吉川さんは、恐れていると思うの」 「何をですか?」 「福部君に前の仕事のことで、偏見をもっていたらどうしようって……」 「佑美に偏見なんて持ってないですよ!」 「本当にそう思ってるの?」 「そ、それは……確かにいいイメージはなかった。でも、今は違います! 何が違うんだって聞かれても、自分でもよく分からないんですけど……今は違う!」 「そう。でも、吉川さんはそう思ってないはずよ。私もそうだったから。好きな人の前だと、いつも不安だった」 僕の前では、一つの方法とか手段とか言って、強い女のイメージの高梨さんだったのに、やはり何かしらの悩みはあるのだ。
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